教員コラム

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vol.38世界とのつながりから考える

 福島では未だに予断を許さない状況が続いているが、関西

は原発問題への関心が薄れつつあるのではないかと心配してい

る。四月の統一地方選の時には「京都や大阪には原発が無いの

だから、原発を選挙で持ち出すのはおかしい」というような声

もあったが、とんでもない話だ。甚大な放射能汚染が関西にま

で及ぶ可能性は低いのだとしても、福島原発の問題を遠くの出

来事として済ましてはいけない。

 

 関西に住む我々も、電力のかなりの部分を原発に依存して

活している。主に関西の都市部が必要とする電力を供給するた

めに、福井県に原発の危険が押しつけられている。原発労働者

の被曝の問題もある。我々の生活のために離れた土地で何が起

きているかを知り、問題解決のためにどうすべきかを我々も考

える必要があるはずだ。

 

 遠くの出来事と思えることでも、我々の生活と深く関わって

いる場合が少なくない。

 

 筆者はアフリカで野生チンパンジーの調査をおこなってきた。

野生の大型類人猿は、熱帯雨林の伐採や密猟などにより数が減

少し、絶滅の危機に瀕している。類人猿の棲むアジアやアフリ

カの熱帯は、日本に暮らす多くの人にとっては「どこか遠く」

の場所に思えることだろう。しかし、彼らの危機的状況は我々

の生活とも深く関わっている。たとえば、伐採された熱帯雨林

の木材は日本に輸入されている。我々が洗剤や食用として使う

パームオイルを採るため、熱帯雨林を伐採してアブラヤシのプ

ランテーションが作られてきた。また、日本で携帯電話などに

使われる希少金属(コルタン)の採掘のために森林地帯に人が

集まり、ゴリラの密猟が増えたと言われている。

 

 我々の生活は、世界中のさまざまな問題とつながっている。

自分の生活や行動が世界にどのような影響を与えているのか、

さらに未来の世代にどのような影響を与えるかを知ること、想

像すること、そして考え、行動することが大事だと思う。

松阪 崇久 助教